最近、本を読みました。
ボクはやっと認知症のことがわかった
-自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言-
著者/長谷川 和夫 猪熊 律子
この本の著者である長谷川和夫先生は、今では全国の病院や施設で使われるようになった「長谷川式簡易知能評価スケール」いわゆる、記憶力の検査スケールを作った方です。
当施設でも、認知症の有無に関わらず、利用者の方々に協力していただき、このテストを実施しています。
「人生百年時代」といわれるほど長寿化が進む日本では、2007年に生まれた子供は、その半数が107歳まで生きうるとされています。
また、厚生労働省の研究班の調査では、「団塊の世代」が全員75歳以上となる2025年には認知症高齢者の数は約700万人、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になるとされています。
100歳まで生きることが当たり前になり、年齢を重ねれば重ねるほど認知症になる可能性が高くなるわけですから、これからの時代は特に、誰もが認知症になる可能性があるということです。
わたしがこの本を読んで知り、ブログを読んでくださった皆様に紹介したいと思ったのが、「パーソン・センタード・ケア」という考え方です。
このブログでは、認知症の方との関わり方「パーソン・センタード・ケア」について、この本の内容を引用・参考にしつつお話できたらなと思います。
🌼パーソン・センタード・ケア🌼
“人はみんな、それぞれ違っていて、それぞれが尊い。認知症になったからといって、その尊厳が失われるわけではない”
従来の認知症の捉え方を再検討し認知症患者の個性や人生、尊厳としっかり向き合うことで、介護施設や介護者中心ではなく、「その人を中心とした最善のケア」をめざす、というものです。
トム・キットウッドは、認知症の症状は次の5つの要素からなると考えました。
①脳の障害
脳が障害され、認知機能が衰えることで、認知症の方は不安感や不快感を感じています。
・最近のことを記憶できない
・今がいつで、ここがどこだかわからない、など
②健康状態
視力や聴力などの感覚機能の衰え、合併疾患、薬の副作用などで不快感が増していませんか?
・痛みやかゆみ、体調不良が生じている
・メガネや補聴器が合っていない、など
③生活歴
認知症になったからといって突然人が変わるわけではありません。好きなもの・嫌いなもの、得意・不得意、暮らしてきた環境や職業で、その人の考え方や価値観は変わってきます。
性格はその人の症状の現れ方に影響を及ぼします。「わからないこと」に対して、落ち着いた性格の人もいれば、心配症な人もいます。社交的な人もいれば、人付き合いが苦手な人もいます。内気で人付き合いが苦手な人を、無理やり大勢でのレクリエーションに連れ出すと、激しく拒否されてしまうこともあるでしょう。
認知症になっても、感情やプライドは残っています。
・頭ごなしに考えや意見を否定してしまう
・これまでと違ったように、叱ったり、子供扱いする
・無視したり、軽んじられたり、途端に人格が失われたように扱われる、など
「なにいってるの」「しっかりしてよ」といった対応は余計に混乱を強め、不安な気持ちを強めてしまいます。プライドが傷つけられたら怒るし、悲しみます。
“人は、自分が次に何をするべきかわからなければ、不安になります。自分がその人の立場ならどうかと考えて、次にすることをきちんと説明してあげる。これが重要です。周囲の人がそういう接し方をしてくれると、認知症の人はとても安心します。”
(著書引用)
“何もわからないと決めつけて置き去りにしないで。本人抜きに物事を決めないで。時間がかかることを理解して、暮らしの支えになってほしい。”
(著書引用)
長寿化進み、伴い認知症の方も増えているということは、それだけ世界各国で課題となり、認知症の医療、介護面の技術や知識は進んでいます。国や各地方自治体でも、認知症の方が安心できる暮らしづくりが取り組まれています。
なんでわかってくれないのか。
なにをそんなに怒っているのか。
なんでそんなことするのか。
「認知症だから」という言葉で片付けずに、そこにあるのが混乱と不安であること、認知症の方に寄り添ったケアをしていきたいと思いました。
とてもよい本だったので、つい長くなってしまいました😓
以上、木村がお送りしました🌷
参考文献:パーソン・センタード・ケアの理解.認知症介護研究・研修大付属センター